有名ゲームミュージック・コンポーザーにも、独自にゲーム以外の幅広い音楽活動をしている人は多い。それらはゲームとまったく違う音が楽しめるのはもちろん、時にゲーム音楽との意外な共通点を見出して、一人ニヤニヤしてしまうこともあるはず。そうしたコンポーザーたちの異なる側面に光を当てるこの企画、第1回は光田康典の「Colours of Light」をご紹介します。
名曲の誉れ高い『クロノ・トリガー』や『ゼノギアス』などのBGMの作曲者として知られる光田康典氏。熱心なファンを多く獲得したこれらの楽曲群は、あれからどれだけの年月が経とうとも、ファンをして飽かしめません。世の中にはすぐ飽きる新曲がある一方、どれだけ聴いても飽きない名曲がある。周知のことながら、氏の音楽にその機微を感じ取っているファンは数多いはず。
新旧ゲーム総合誌「ゲームサイド」Vol.12でも、DS『ソーマブリンガー』発売直後にインタビューをしています。氏は音楽への興味を映画音楽から出発させており、フルオーケストラとの共演を実現したり、実際に映画音楽を手がけたりと、ゲームの枠だけに留まらない活躍を続けています。
氏が2001年に立ち上げたレーベル「SLEIGH BELLS(スレイベルズ)」より、9作目にして初のヴォーカル・コレクションCD「Colours of Light -Yasunori Mitsuda Vocal Collection-」が発売となったのは、8月26日のことでした。
これは光田氏がこれまでに手がけてきたヴォーカル曲の集大成。ヴォーカル曲といっても、氏がヴォーカルをとっているわけではありません。歌うはカラーもさまざまな、女性ヴォーカリストたち。
本作は意外にも、ゲームと関わった楽曲が多くなっています。全15曲中、PS『ゼノギアス』(1998年、スクウェア)に関係した曲が、未使用曲も含め5曲。そのほかはPS『クロノ・クロス』、PS2『ゼノサーガ エピソードI』、DS『ソーマブリンガー』、DS『ワールド・デストラクション』、そして台湾のPCゲーム『THE SEVENTH SEAL』といったゲームからの楽曲が収録されています。
直接ゲーム関連でない曲は3曲。2005年のCD「kiЯite」(「キリテ」。正しくは“e”も左右反転)からの楽曲が2曲、1999年のCD「TEN PLANTS 2」からの楽曲が1曲。
しかし「kiЯite」は光田氏がゲームクリエイターの加藤正人氏(ファミコン『忍者龍剣伝』でデビューし、『クロノ・トリガー』『ゼノギアス』などにも参加したゲームクリエイター)と組んで制作したコンセプト・アルバムであり、「TEN PLANTS 2」は『ファイナルファンタジー』シリーズの植松伸夫氏と、ハドソン出身で現在はスピリチュアルカウンセラーとして活躍する笹川敏幸氏とが企画した、ゲーム作曲家たちによるオムニバス・アルバムの第2弾ということで、まったくゲームとつながりがないわけではありません。その意味で本作はゲームBGM集とは違ったアプローチの、光田氏の“もうひとつのゲーム音楽集”といった側面があると言えます。
さて、実際に収録されている曲についてまず。1曲目「Sailing to the World」は『THE SEVENTH SEAL』からで、小峰公子さんが歌う、どこか草原を吹き渡る風をイメージさせる曲。アコースティックギターやバイオリン、光田氏のキーボードが織り成すメロディーの中でヴォーカルがまさしく一楽器のように主張しています。
が、驚いたことにいきなり歌詞がないのです。
たしかに力強く何かを歌ってはいるのだが、歌詞カードによると、「造語による架空の詞のため、特定の文字表現がありません」とのこと。いわばこのアルバムの、3分間にわたる壮大なイントロダクションでしょうか。
2曲目は「kiЯite」より、河井英里さんが歌う「風の約束~花片の行方」。ゲームサントラではない「kiЯite」からの曲ながら、ギター&ベース&ドラム&キーボードと、耳慣れた編成で少しゲーマー的にはほっとするかも(笑)。河井さんのハイトーンなヴォイスが、ほかの音たちよりも頭ふたつ分くらい突き抜けて響き渡ります。
3曲目はDS『ワールド・デストラクション ~導かれし意思~』より、「時の腕(かいな)」。歌うはCZECH PHILHARMONIC CHILDREN'S CHOIR……さん? ああ、合唱か(「CHOIR」はクワイア、つまり聖歌隊という意味らしいです)。まさしく教会のゴスペル・ソングのような1曲。
4曲目「Pain」はPS2『ゼノサーガ エピソードI』よりのJoanne Hoggさんの英語曲。これは聴いたことがある人も多いのではないでしょうか? 5曲目「CREID」6曲目「光の階段」がPS『ゼノギアス』より、7曲目「Kokoro」がふたたび『ゼノサーガ エピソードI』よりと、“ゼノ”関連からのサウンドが続きます。
8曲目「- Ring -」はDS『ソーマブリンガー』から。かなり売れたソフトですが、まだやったことのない人はやったほうがいいですよ。面白いですよ。音楽めっちゃキレイですよ、DSなのに。この曲は河井英里さん、小峰公子さん、廣瀬多美恵さんのヴォイスが、幾重にも層を成して迫ってくる感じ。贅沢です。
9曲目「銀色のライカ」はCD「TEN PLANTS 2」より。この、みとせのりこさんの歌唱は、どこか童謡をイメージさせるような気がします。
10曲目はまたも『ゼノギアス』より「STARS OF TEARS~ やさしく星ぞ降りしきる~」。これはアメリカのポップソングといったテイストがするような気がします。途中で転調があるあたりも歌謡曲っぽい気が……。英語ながらすごく聴きやすい曲です。
11曲目「春の子守歌」、12曲目「SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~」と『ゼノギアス』からの曲が連続します。なんとヴォーカル曲の多いゲームでしょう。「春の子守歌」は春のおだやかさというよりは、萌え出ずる草花の力強さをイメージさせる曲、「SMALL TWO OF PIECES」はJoanne Hoggさんらしい、聴きやすい、耳に入ってきやすい歌声が印象的。
13曲目「Reincarnation」は1曲目と同じく小峰公子さんで『THE SEVENTH SEAL』より。こちらも造語による架空の詞です。
14曲目は「希望の名は」、CD「kiЯite」より。河井英里さん。おそらく河井さんと思われる綺麗なコーラスが印象的。
ラストの15曲目はみとせのりこさんで「RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~」。
PS『クロノ・クロス』より。伴奏はアコースティック・ギターのみのシンプルながら深い曲です。フレット・ノイズいいですね。このアルバムの最後をしっとりと締めます。
これら15曲は、すべて光田氏の作曲。「Colours of Light」のタイトルどおり、光田氏のもつ多様な面が、色とりどりの光彩を放ち、歌い手さんたちをさまざまな角度から照らし出しているような気がします。これだけのことを表現しつくすために、15曲という数が必要だったのかも。「Light」だけに陰気な曲がないのも特徴。安心して聴けます。
文章だけでは当然すべては伝わらないので、何はともあれまずは視聴から。こちらから全曲の視聴が可能です。
ゲーム音楽から、作曲家のことが好きになれば、次にその人の人柄、考え方が気になることもあるはず。ゲームでは間違いなく、音楽よりもゲームそのものが主だから、こうした音盤が作曲家個人を知る上では非常に重要です。
ジャケットからのイメージどおり、実に綺麗な音楽であり、癒やし系でもあると思うし、何より全曲、まぎれもなく光田康典の音楽。これまでの光田氏の音楽のファンに、間違いなく胸を張ってお薦めできる品であると、自信をもって断言します。
(編集部 長門)
慈しみ深き、嘆きの底の情景さえも、やさしく包み込む音色
光満ち躍る色彩
「Colours of Light -Yasunori Mitsuda Vocal Collection-」
(カラーズ・オブ・ライト 光田康典ヴォーカルコレクション)
■2009年8月26日発売
■2940円(税込)
■発売元:プロキオン・スタジオ/SLEIGH BELLS
■販売元:ソニー・ミュージックディストリビューション
■仕様:スリーブケース付きデジパック仕様
■初回特典:ピクチャーレーベルディスク
01. Sailing to the World
「THE SEVENTH SEAL」より/小峰公子
02. 風の約束~花片の行方
「kiЯite」より/河井英里
03. 時の腕
「ワールド・デストラクション ~導かれし意思~」より/CZECH PHILHARMONIC CHILDREN'S CHOIR
04. Pain
「Xenosaga Episode I [力への意志]」より/Joanne Hogg
05. CREID
「Xenogears」より/Eimear Quinn
06. 光の階段
「Xenogears」より/本間“Techie”哲子
07. Kokoro
「Xenosaga Episode I [力への意志]」より/Joanne Hogg
08. – Ring -
「SOMA BRINGER」より/河井英里, 小峰公子, 廣瀬多美恵
09. 銀色のライカ
「TEN PLANTS 2」より/みとせのりこ
10. STARS OF TEARS ~やさしく星ぞ降りしきる~
「Xenogears」より/Joanne Hogg
11. 春の子守歌
「Xenogears」より/本間“Techie”哲子
12. SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~
「Xenogears」より/Joanne Hogg
13. Reincarnation
「THE SEVENTH SEAL」より/小峰公子
14. 希望の名は
「kiЯite」より/河井英里
15. RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~
「CHRONO CROSS」より/みとせのりこ
■「Colours of Light」公式紹介ページ
http://www.procyon-studio.com/sleighbells/index.html#col
■光田康典 公式サイト“Our Millennial Fair”
■プロキオン・スタジオ 公式サイト
http://www.procyon-studio.co.jp/
光田康典のインタビューも収録! ゲームサイド編集部の本















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